股関節唇損傷

股関節唇損傷による関節の安定性や機能低下について

股関節の怪我などで周辺組織を損傷することがあり、この場合に股関節の機能が低下しやすくなります。股関節唇にも同様のことが起こり、股関節唇の損傷により股関節の安定性が低下し、衝撃吸収能力が低下し、さらには関節の摩擦が増えて股関節の動きが悪くなるといったことが考えられます。

 

ポイント

  • 股関節唇は股関節を安定させ股関節の脱臼などを防ぐ役割があります
  • 股関節唇には水分を留める役割もあり、この水分があることで衝撃吸収能力を高めます
  • 股関節唇は股関節の動きをスムーズにする働きもあります

 

股関節唇の解剖

股関節唇は骨盤にあり、大腿骨が収まるように周りを縁取った形状をしています。

参照https://physiolounge.co.uk/what-is-an-acetabular-labral-tear/

 

股関節唇による股関節の安定性

股関節唇は股関節を安定させ、股関節の脱臼などを防ぐ役割があります。

股関節の周辺組織の損傷による安定性への影響

(Myers et al 2011より引用)

  • 献体を使った実験により股関節唇と靭帯などが股関節の安定性に与える影響を調べた研究があり、これによると股関節唇は股関節の安定に貢献しているようです。もちろん靭帯ほど股関節を安定させる効果はないようですが。
  • 献体や股関節を再現した実験では、股関節唇がないことでより少ない力で脱臼しやすくなることが確認されています2〜4

このため股関節の怪我などにより股関節唇を損傷してしまった場合には股関節が不安定になりやすく、時には股関節の脱臼などにつながる可能性があるので注意が必要かと思います。

 

股関節唇による衝撃吸収能力

股関節唇は衝撃吸収能力にも関係しています。

 

  • 股関節唇自体の衝撃吸収能力は限定的であり、股関節唇がなくても軟骨への負荷がさほど変わらないことや、関節の負荷の分散が行われないことが献体による実験で報告されています
  • しかし股関節唇には水分が移動する抵抗力を高めることで水分を留める役割もあり、股関節に水分があることで衝撃吸収能力を発揮し、さらには水分があることで関節全体に負荷が分散されるような効果も得られると考えられています。
  • ある研究によるコンピューターシミュレーションでは股関節唇がないことで股関節の水分が変化し、これによって接触による負荷が著しく増加していたことが報告されています

(Dwyer et al 2014より引用)

このように股関節唇には衝撃吸収能力があり、股関節唇を損傷してしまうとその機能が低下しこれにより股関節の軟骨などへの負荷が増加し、変形性股関節症などへとつながりやすくなる可能性があると考えられます。

このように股関節唇は衝撃吸収に関係しているかと思います。

 

股関節唇と股関節の動き

股関節唇は股関節の動きをスムーズにする働きもあります。

股関節包

股関節唇がないことで関節を動かす時の摩擦も大きくなり、少しだけ関節がスムーズに動かなくなることが献体による実験で報告されています10

このため、股関節唇が損傷することで股関節の動きが悪くなり、身体への負荷が増える可能性があります。

 

まとめ

股関節唇が損傷することで股関節の安定性が低下や衝撃吸収能力の低下などの機能低下を招く可能性があります。身体への負荷を少しでも軽減するためにリハビリなどにしっかりと取り組み、股関節の機能を高めておくことが大切になってくるかと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Myers CA, Register BC, Lertwanich P, et al. Role of the Acetabular Labrum and the Iliofemoral Ligament in Hip Stability: An in vitro Biplane Fluoroscopy Study. Am J Sports Med. 2011;39(1_suppl):85-91.
  2. Bonner TF, Colbrunn RW, Bottros JJ, et al. The contribution of the acetabular labrum to hip joint stability: a quantitative analysis using a dynamic three-dimensional robot model. J Biomech Eng. 2015;137(6):061012.
  3. Signorelli C, Lopomo N, Colle F, et al. Restoration of the Seal Function of the Acetabular Labrum: In Vitro Study. Journal of Mechanics in Medicine & Biology. 2015;15(2):1.
  4. Crawford MJ, Dy CJ, Alexander JW, et al. The 2007 Frank Stinchfield Award. The biomechanics of the hip labrum and the stability of the hip. Clin Orthop Relat Res. 2007;465:16-22.
  5. Henak CR, Ellis BJ, Harris MD, Anderson AE, Peters CL, Weiss JA. Role of the Acetabular Labrum in Load Support Across the Hip Joint. J Biomech. 2011;44(12):2201-2206.
  6. Konrath GA, Hamel AJ, Olson SA, Bay B, Sharkey NA. The role of the acetabular labrum and the transverse acetabular ligament in load transmission in the hip. J Bone Joint Surg Am. 1998;80(12):1781-1788.
  7. Dwyer MK, Jones HL, Hogan MG, Field RE, McCarthy JC, Noble PC. The Acetabular Labrum Regulates Fluid Circulation of the Hip Joint During Functional Activities. Am J Sports Med. 2014;42(4):812-819.
  8. Soltz MA, Ateshian GA. Experimental verification and theoretical prediction of cartilage interstitial fluid pressurization at an impermeable contact interface in confined compression. J Biomech. 1998;31(10):927-934.
  9. Ferguson SJ, Bryant JT, Ganz R, Ito K. The influence of the acetabular labrum on hip joint cartilage consolidation: a poroelastic finite element model. J Biomech. 2000;33(8):953-960.
  10. Song Y, Ito H, Kourtis L, Safran MR, Carter DR, Giori NJ. Articular cartilage friction increases in hip joints after the removal of acetabular labrum. J Biomech. 2012;45(3):524-530.

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