腰痛のメカニズム

腰痛におけるドローイン神話とそのメカニズムについて

体幹トレーニングという言葉を耳にすることが増えたかと思いますが、それと同時にドローインという言葉も耳にしたことがある人も少なくないと思います。ドローインとはお腹を凹ませながらやるエクササイズのことを言います。(厳密にはもっと細かい手順がありますが)

こういったエクササイズにより腹横筋と呼ばれるお腹をコルセットのように包んでいる筋肉が鍛えられ、腰痛改善やスポーツのパフォーマンスができるのではないかと考えられています。

腹横筋

参照https://espoirbeauty.com/en/how-to-train-the-transverse-abdominis/

しかし、体幹トレーニングについては熱い議論が交わされていて効果があるとする人もいれば、効果がないとする人もいて混乱を招きやすい分野でもあると言えます。そこで今回はドローインに関する参考文献をもとにそのメカニズムを解説していきたいと思います。

 

ポイント

  • 腹横筋の働きが極端に弱い場合にはドローインにより腰痛改善効果があるようです
  • お腹を凹ませた状態では安定性が低下し、スポーツ時の動作などがやりにくくなります
  • 特定の筋肉だけでなく体幹周りの筋肉をバランス良く鍛えていくことが大切になります

 

腹横筋の働きが遅れていることが腰痛の原因?

腹横筋の働きの遅れだけが腰痛の原因ではありません。

ドローインによるエクササイズを推奨する時に用いられる根拠のひとつが、腰痛を持っていた人は腕をあげる動作において腹横筋の働きが遅れていたとする研究結果です

手を動かす動作と体幹部の筋肉の測定

(Hodges and Richardson 1996より引用)

腹横筋が動作の前に働いていたことからとても重要な筋肉なのではないか?とも考えられているわけですね。しかし、腹横筋だけでなく他の筋肉も働くタイミングが遅れる可能性があり、腹横筋だけの問題なのかという点に疑問が残りますね。

  • ある研究では腰痛があるからといって必ずしも腹横筋の働きが遅れているわけではないという報告がされています
  • さらにドローインのエクササイズをやっても腹横筋が働くタイミングにはあまり変化はないという研究結果もあります

この他にも色々な研究結果を考慮した結果、ドローインにより腹横筋が働くタイミングを早めて腰痛を減らす効果には疑問が残るといわざるを得ないようです

 

ドローインが腰痛改善効果を発揮するのはなぜ?

腹横筋が働くタイミングが腰痛の全てではありませんが、ドローインにより腰痛が改善した!というような事例もあるかと思います。それは腹横筋の機能が低下している場合ではないかと思います。

ドローインは腹横筋などのインナーマッスルの使い方を学ぶという点では効果があるのかもしれません。ドローインをしている時の筋肉の働きを調べたところ、腹横筋などのインナーマッスルを中心として筋肉の活動量が増えている可能性が読み取れるわけです。

ドローインと体幹部の筋肉のエコー検査

(Kim et al 2019より引用)

ドローインと腰痛の研究

  • ドローインにより腰痛が改善するのは腰痛を持っている人は腹横筋の働きが極端に弱い可能性があることや、一定の姿勢安定効果が見込めるからと考えられます
  • とある研究で8週間のドローインエクササイズをやってみたところ、腹横筋の働きが大きく低下していた人には腰痛の改善効果がみられたそうです。しかし、この研究では腹横筋が働くタイミング遅れやドローインの強化などは腰痛との関係性が低かったということもわかっています。

ということで、ドローインのエクササイズで腰痛改善の効果が見込めるのは腹横筋の働きが大きく低下している場合と言えるのではないでしょうか?

 

ドローインの問題点

ドローインは万能なエクササイズではなく、ドローインを使う状況というものを考慮したほうがいいかもしれません。

というのも、ドローインをキープしながら色々なエクササイズをしましょう!と勧めているのを目にすることがあります。

サイドプランク

確かにドローインは腹横筋などのインナーマッスルの活動量を増やす可能性はありますが、ドローインがかえって安定性を損なう可能性があります。次の図のようにドローインをした状態では、体幹を支えるのに不安定な状況を作り出してしまうと考えられています。

ドローインのメカニズム

(McGill 2015より引用)

実際にドローインをしながらエクササイズをやってみればわかると思いますが、ドローインをするとエクササイズがキツくなるかと思います。これは安定性が損なわれているからではないでしょうか?つまり、ドローインをするとパフォーマンスが落ちる可能性があるということです。

実際にスポーツをプレーしている最中にドローインでお腹をへこましながら動くことは少ないと思います。やはりドローインをすると動きにくくなるためではないでしょうか。

 

ドローインはインナーマッスルを鍛えるためにやっているという意見もあるかもしれません。しかし、特定の筋肉だけに頼るよりも複数の筋肉をバランスよく使ったほうがより大きな安定性を獲得しやすいという研究結果があります10

ドローインとブレーシングの体幹の安定性

(Grenier and McGill 2007より引用)

これはインナーマッスルだけを鍛え続けるよりも、多くの筋肉をバランスよく鍛えてより実践に近い形でトレーニングをしたほうが効率的であるということを示唆しています。

 

まとめ

これらのデータを踏まえた結論としては、ドローインは補助輪をつけて自転車に乗る練習をするようなもので、自転車にうまく乗れるようになったら補助輪を外してより実践的なトレーニングをしたほうがいいのではないか?というところではないでしょうか。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Hodges PW, Richardson CA. Inefficient muscular stabilization of the lumbar spine associated with low back pain. A motor control evaluation of transversus abdominis. Spine. 1996;21(22):2640-2650.

  2. Hodges PW, Richardson CA. Delayed postural contraction of transversus abdominis in low back pain associated with movement of the lower limb. J Spinal Disord. 1998;11(1):46-56.

  3. Gubler D, Mannion AF, Schenk P, et al. Ultrasound tissue Doppler imaging reveals no delay in abdominal muscle feed-forward activity during rapid arm movements in patients with chronic low back pain. Spine. 2010;35(16):1506-1513.

  4. Vasseljen O, Unsgaard-Tøndel M, Westad C, Mork PJ. Effect of core stability exercises on feed-forward activation of deep abdominal muscles in chronic low back pain: a randomized controlled trial. Spine. 2012;37(13):1101-1108.

  5. Wong AYL, Parent EC, Funabashi M, Stanton TR, Kawchuk GN. Do various baseline characteristics of transversus abdominis and lumbar multifidus predict clinical outcomes in nonspecific low back pain? A systematic review. Pain. 2013;154(12):2589-2602.

  6. Eun-Song Kim, Da-Song Gil, Su-Bin Kim, et al. The Comparisons of Different Abdominal Drawing-in Maneuver During Plank Exercises on Trunk Stability. Medico-Legal Update. 2019;19(2):404-410.

  7. Ehsani F, Arab AM, Jaberzadeh S, Salavati M. Ultrasound measurement of deep and superficial abdominal muscles thickness during standing postural tasks in participants with and without chronic low back pain. Man Ther. 2016;23:98-105.
  8. Knox MF, Chipchase LS, Schabrun SM, Marshall PWM. Improved compensatory postural adjustments of the deep abdominals following exercise in people with chronic low back pain. J Electromyogr Kinesiol. 2017;37:117-124.

  9. Unsgaard-Tøndel M, Lund Nilsen TI, Magnussen J, Vasseljen O. Is activation of transversus abdominis and obliquus internus abdominis associated with long-term changes in chronic low back pain? A prospective study with 1-year follow-up. Br J Sports Med. 2012;46(10):729-734.

  10. Grenier SG, McGill SM. Quantification of Lumbar Stability by Using 2 Different Abdominal Activation Strategies. Archives of Physical Medicine and Rehabilitation. 2007;88(1):54-62.

  11. Mcgill, Stuart. Low Back Disorders; Evidence-Based Prevention and Rehabilitation. Human Kinetics. 2015

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