コラム

筋膜による力の伝達と運動連鎖について

人の身体は不思議なもので患部に直接アプローチしなくとも、遠く離れた筋肉などによっても影響を受けることが珍しくありません。このような事象を説明するのに筋膜によって身体がつながっているという説を用いられることがありますが、そのメカニズムは科学的に客観的な検証されていない部分も多くあります。

ポイント

  • 筋肉が生み出した力は筋膜にも伝達すると考えられています。
  • それぞれの筋肉によって筋膜への力の伝わり方が違い、筋膜以外の結合組織にも力が伝わると考えらえれています。
  • 筋膜を使ったモデルは必ずしも複雑な事象を正確に表しているとは限りませんが、単純化してわかりやすくするという意味で大いに価値があると思います。

 

筋膜への力の伝達

筋肉が生み出した力は周辺の部位にも伝達すると考えられていて、有名なものが腰の筋膜です。

(Barker et al 2004より引用)

  • 腰の筋膜は周辺の筋肉とつながっており、お尻の筋肉や広背筋など周辺の筋肉を引っ張ると腰の筋膜も同時に引っ張られます
  • しかし、それぞれの筋肉によって筋膜への影響が違い、広背筋や腹横筋を引っ張ると腰の筋膜に張力が生まれやすいことが献体による実験で報告されています

このように筋肉が生み出した力で筋膜が引っ張られるということが起こるわけです。

 

協働筋への力の伝達

たとえ筋肉が直接つながっていなくとも、類似する筋肉にも力が伝達することが起こることがあります。

ふくらはぎの筋肉

ふくらはぎの内側の筋肉が収縮することで周辺の筋肉も引っ張られることが報告されています

これは筋膜などによって間接的に繋がっているためではないか?と考えられています。

 

拮抗筋への力の伝達

このような力の伝達は共同して働く筋肉だけでなく、拮抗して働く筋肉の影響を受ける可能性があります。

前脛骨筋

ラットを使った実験ですが、長指伸筋の力の出力は前脛骨筋だけでなく、拮抗する筋肉である後脛骨筋からも影響を受けることが報告されています

たとえ反対の機能を持つ筋肉であったとしても、間接的な繋がりにより力が伝達することもあるようです。

 

離れた部位にも力が伝達する

下半身の力が上半身に伝わるように、ある程度離れた場所であっても力が伝わることがあります。

胸腰筋膜

広背筋を引っ張ることで股関節の動きが変化したりと、遠く離れた場所にも力が伝達することが報告されています。

また、投げる動作は下半身の力が重要だ!というのもひとつの例ではないでしょうか。

 

力の伝達は筋膜だけじゃない

力の伝達は筋膜を介して行われているという説をしばしば目にする機会があります。

参照https://absolutehealthperformance.com.au/myofascial-meridians-soft-tissue-massage/

しかし、力の伝達は筋膜だけで行われているわけではなく、複数の種類の結合組織が関わっていると考えたほうがよさそうです7・8

筋肉が生み出した力の全てが筋膜に伝達するわけではありませんし、その力の伝わり方には場所や状況によって変わってくる可能性も考えられます。

とはいえ複雑な運動連鎖の流れを単純化してわかりやすくするという意味ではこういった筋膜を使ったモデルはとても使い勝手がいいのかなと思います。

 

まとめ

いずれにしても筋肉の単体だけでは説明できない事象などもあり、複数の筋肉が力を伝達するところを理解しなければ筋肉の真の機能はわからないのではないか?という疑問が投げかけられています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Maas H, Sandercock TG. Force Transmission between Synergistic Skeletal Muscles through Connective Tissue Linkages. J Biomed Biotechnol. 2010;2010.
  2. Vleeming A, Al P-G, R S, Jp van W, Cj S. The posterior layer of the thoracolumbar fascia. Its function in load transfer from spine to legs. Spine. Published April 1, 1995.
  3. Barker PJ, Briggs CA, Bogeski G. Tensile transmission across the lumbar fasciae in unembalmed cadavers: effects of tension to various muscular attachments. Spine (Phila Pa 1976). 2004;29(2):129-138.
  4. Bojsen-Møller J, Schwartz S, Kalliokoski KK, Finni T, Magnusson SP. Intermuscular force transmission between human plantarflexor muscles in vivo. J Appl Physiol (1985). 2010;109(6):1608-1618.
  5. Pa H, Rw van de L, Jj M, Gc B. Extramuscular myofascial force transmission also occurs between synergistic muscles and antagonistic muscles. Journal of electromyography and kinesiology : official journal of the International Society of Electrophysiological Kinesiology. doi:10.1016/j.jelekin.2007.02.005
  6. Carvalhais VO do C, Ocarino J de M, Araújo VL, Souza TR, Silva PLP, Fonseca ST. Myofascial force transmission between the latissimus dorsi and gluteus maximus muscles: an in vivo experiment. J Biomech. 2013;46(5):1003-1007.
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  8. Turrina A, Martínez-González MA, Stecco C. The muscular force transmission system: role of the intramuscular connective tissue. J Bodyw Mov Ther. 2013;17(1):95-102.
  9. Huijing PA. Epimuscular myofascial force transmission: a historical review and implications for new research. International Society of Biomechanics Muybridge Award Lecture, Taipei, 2007. J Biomech. 2009;42(1):9-21.

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