前十字靭帯損傷

前十字靭帯損傷後の膝の腫れと代償動作

怪我すると膝が腫れてしまうことは珍しくなく、膝の腫れをコントロールすることは膝の回復のためにとても重要です。その一方で、怪我をしたときに引き起こされる現象は身体を守るための反応だったりする可能性もあり、何かしらの意味があるかもしれません。

今回は膝の腫れを運動力学という側面からみていきたいと思います。

 

ポイント

  • 膝の腫れにより大腿四頭筋の筋力が抑制されますが、ふくらはぎの筋肉の働きが大きくなるようです。
  • 膝が腫れた状態のほうが片脚立ちが安定することがあり、身体を守るための反応が起きていることが考えられます。
  • 膝の腫れはあくまで身体を守るための緊急時の防衛反応であり、長期的には悪影響を及ぼす可能性が十分にあります。

 

膝が腫れが筋肉の働きを抑制する

前十字靭帯断裂後は筋肉の働きが低下し、簡単には筋力が戻らないことが珍しくありません。

これによって前十字靭帯損傷後のリハビリが思うように進まなかったり、再断裂などの怪我につながることも考えられます。

そして、膝の腫れが筋肉の働きが低下する原因のひとつとして考えられています。

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膝が腫れで働きやすくなる筋肉

膝が腫れていることで働きが抑制される筋肉がある一方で、働きが活性化される筋肉もあるようです。

 

膝に生理食塩水を注入して膝の腫れを再現した実験では大腿四頭筋の活動が抑制されたのですが、ふくらはぎの筋肉であるヒラメ筋の反応が促進されることが報告されています1〜3

(Hopkins et al 2000より引用)

 

これは身体を守るための反応ではないかと考えられており、ふくらはぎの筋肉には膝の安定性を高め、前十字靭帯への負荷を減らす機能があることが研究で明らかになっています。

前十字靭帯断裂を起こした脚のふくらはぎが硬くなりやすい、という声も耳にするのもこういったことが関係しているかもしれませんね。

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膝が腫れているほうが姿勢が安定する?

興味深いことに膝が腫れているほうが姿勢が安定することがあるようです。

ある研究では生理食塩水を注入し、目を閉じて片足立ちをしたところ姿勢が安定するようになったことが報告されています

片脚立ちバランス

実際の怪我では膝のダメージがあるためこのような結果になるとは限りませんが、少なくとも身体を守るために筋肉の働きが変わっているのかもしれません。

そして、片足立ち以外の動作で同じようなことが起こるとは限りません。

 

身体への負荷が軽減されているとは限らない

膝が腫れている状態のほうが姿勢が安定するからといって、身体への負荷が軽減されているわけではありません。

膝の腫れ

ここで膝の腫れを再現するために生理食塩水を注入した研究があるのですが、歩行動作のパターンが変わり膝の負荷をさけるような歩き方に変化していることが報告されています

膝に負担がかかる動作を避け続けたら膝の機能が低下する可能性がありますし、身体の違う部分に負荷がくる可能性も考えられます。

何より膝が腫れている状態ではダメージの回復が遅くなるなどの悪影響が十分に起こり得ます。

 

まとめ

膝が腫れることによって筋肉の活動パターンが変わり、どうにか身体を安定させようとする機能が働きます。しかし、あくまで身体を守るための代償的な機能であり、しっかりと膝の機能を回復させていくことが大切になってくるかと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Hopkins JT, Ingersoll CD, Krause BA, Edwards JE, Cordova ML. Effect of knee joint effusion on quadriceps and soleus motoneuron pool excitability. Med Sci Sports Exerc. 2001;33(1):123-126.
  2. Hopkins JT, Ingersoll CD, Edwards JE, Cordova ML. Changes in soleus motoneuron pool excitability after artificial knee joint effusion. Archives of Physical Medicine and Rehabilitation. 2000;81(9):1199-1203.
  3. Palmieri RM, Tom JA, Edwards JE, et al. Arthrogenic muscle response induced by an experimental knee joint effusion is mediated by pre- and post-synaptic spinal mechanisms. J Electromyogr Kinesiol. 2004;14(6):631-640.
  4. Palmieri RM, Ingersoll CD, Cordova ML, Kinzey SJ, Stone MB, Krause BA. The effect of a simulated knee joint effusion on postural control in healthy subjects. Arch Phys Med Rehabil. 2003;84(7):1076-1079.
  5. Torry MR, Decker MJ, Viola RW, O’Connor DD, Steadman JR. Intra-articular knee joint effusion induces quadriceps avoidance gait patterns. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2000;15(3):147-159.

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