ゴルフでは無駄な力を抜いて、脱力しながらスイングすることが良いとされていますが、意識してもなかなか思うようにいかないことが多いのではないでしょうか。
ゴルフの脱力スイングのポイント
レッスンプロなどの指導者から「このようにスイングしましょう」と言われても、その通りにスイングができないと相談されることがよくあります。
理想的なスイングを頭ではわかっているんだけれども、身体がその通りに動かないというやつです。
この場合にはゴルフスイングだけの問題ではなくて、実は柔軟性や筋力などの身体の中に問題があることが多くあります。
ストレッチやトレーニングに取り組み、身体の状態を整えることで思い通りに身体を動かしやすくなります。
柔軟性不足や筋力不足を抱えたままでは、本来できるものもできなくなってしまうのです。
脱力したスイングを実現するには「スイングのスキル」「柔軟性」「筋力」の3つの要素が大切なのです。
柔軟性を高める
肩の柔軟性
まず、ゴルフのテイクバックの時に腕が上がらないという悩みがよくあります。
この柔軟性を改善するためには、次のようなストレッチをすることで腕がスッと上がりやすくなります。
しかし、これだけでは十分な可動域を確保することが難しいケースも少なくありません。
その場合には肩甲骨周りもほぐしていくことが重要で、肩甲骨の内側や外側、腕の付け根まで満遍なくほぐすことが大切です。
一人でストレッチで肩甲骨をほぐすには限界があるため、肩甲骨周りをほぐすためにはストレッチよりもボールを使ってのほぐしていく方法が優れているかと思います。
体幹の柔軟性
ゴルフは肩の柔軟性だけでは足りず、体幹部分の柔軟性を確保することも重要になってきます。
このため次の図のように身体を捻る形のストレッチも取り入れることをオススメします。
慣れてきたら足を伸ばして、さらに柔軟性を高めていくことで効果が大きくなっていきます。
ここで気をつけていただきたいのが、腰を捻る可動域が大きくなるほどに腰の負担が大きくなってしまう可能性があるということです。
このため腰だけではなく、股関節の柔軟性も高めていくことが大切です。
股関節の柔軟性
ゴルフは下半身の使い方が大切だと言われることがあるかと思いますが、脚を上手に使えるようになるためには股関節の柔軟性が大切です。
一般的に股関節の柔軟性というと、開脚だとか骨盤を立てることができるかとか、そんなことに注目が集まりがちです。
しかし、ゴルフスイングにおいて重要だとされているのが次の図のような股関節の内旋・外旋の可動域であり、ゴルフスイングに関する科学論文などでは重要な指標として使われています。
この股関節の柔軟性を高めるストレッチには次の図のようなものがあります。
注意点
ストレッチをすると身体が徐々にほぐれていき、柔軟性が高まってくることかと思います。
しかし、これだけでゴルフの脱力スイングができるわけではありません。
かつて私自身もたくさんストレッチをして柔軟性を高めれば、力を抜いた理想的なスイングになると思っていたことがありましたが、現実はそうではありませんでした。
繰り返しになりますが、脱力したスイングを実現するには「スイングのスキル」「柔軟性」「筋力」の3つの要素が必要になってきます。
どれかひとつだけを伸ばしても思うような効果が得られにくいのです。
そもそもストレッチをしても思うように柔軟性が改善していかないケースも少なくありません。
この場合には様々な原因が考えられるので、身体の状況を見極めた上で適切なアプローチをすることが大切です。
詳細はリンク先に記載しています。
筋肉のトレーニング
脱力したゴルフスイングを実現するためには筋肉を鍛えることが欠かせません。
しかし、ボディービルダーのように大きな筋肉ばかりを鍛えても脱力したスイングには近付きにくく、細かい筋肉を鍛えることが脱力スイングを実現する鍵になります。
肩のインナーマッスル
脱力したスイングを作り上げるのに最も大切なのが肩のインナーマッスルを鍛えることで、繊細な動きをコントロールしている筋肉なのです。
ダンベルでゴリゴリに鍛えるよりも、チューブを使ってじっくりと効かせることがポイントです。
体幹トレーニング
ゴルフスイングは全身を連動させた動きであるため、体幹が重要であることは言うまでもありません。
そしてゴルフで忘れていけないことがシックスパックのような筋肉よりも、腹斜筋など体幹の横についている筋肉を鍛えることが極めて重要です。
このため体幹の横部分を鍛えられるようなメニューを積極的に取り入れることが、ゴルフスイングの改善につながります。
横部分というと普段はあまりやらない印象がありますが、思っているよりも高い効果があります。
体幹の横部分が重要とは言え、次の図のように重りを持った状態での身体を捻ったトレーニングには注意が必要です。
こういったトレーニングは腰に高い負担がかかるため、やりすぎると腰痛などにつながります。
股関節
ゴルフスイングを改善するために役立つのがお尻のトレーニングです。
これまで様々なゴルファーに指導してきましたが、多くの人に高い効果を発揮するのがお尻のトレーニングです。
股関節周りの柔軟性がないとトレーニングでお尻の筋肉に十分な刺激が入らないことがあります。
しっかりと股関節の柔軟性を確保した上で、お尻のトレーニングに取り組みましょう。
まとめ
ゴルフの脱力スイングを実現するためのポイントは、ゴルフスイングのスキル、柔軟性、筋力の3つのバランスです。
どれかひとつだけを伸ばしても思うように無駄な力が抜けず、それぞれをバランス良く伸ばしていくことが大切です。
<参考文献>
- Brumitt J, Meria E, Nee B, Davidson G. Glenohumeral joint range of motion in elite male golfers: a pilot study. N Am J Sports Phys Ther. 2008 May;3(2):82-8. PMID: 21509130; PMCID: PMC2953320.
- Mun F, Suh SW, Park HJ, Choi A. Kinematic relationship between rotation of lumbar spine and hip joints during golf swing in professional golfers. Biomed Eng Online. 2015 May 14;14:41. doi: 10.1186/s12938-015-0041-5. PMID: 25971396; PMCID: PMC4430877.
- Lee JC, Lee SW, Yeo YG, Park GD. Effects of special composite stretching on the swing of amateur golf players. J Phys Ther Sci. 2015 Apr;27(4):1049-51. doi: 10.1589/jpts.27.1049. Epub 2015 Apr 30. PMID: 25995553; PMCID: PMC4433974.