前十字靭帯損傷

前十字靭帯断裂後の筋力低下は脳神経が原因なのか?

前十字靭帯断裂後に筋力発揮が低下することがありますが、その理由のひとつに脳神経の働きが低下しているという説があります。

まだまだ研究で解明されていないことも多いですが、数ある説のひとつとしてご紹介したいと思います。

脳

ポイント

  • 前十字靭帯損傷後は筋力発揮がしにくい傾向にあります。
  • 前十字靭帯断裂後は脳からの刺激に反応が鈍くなり、筋力との関係性がみられたそうです。
  • 継続的なリハビリや運動などにより脳神経の機能が高まる可能性があります。

 

前十字靭帯断裂後の筋力発揮の低下

前十字靭帯断裂後は筋力発揮がしにくいと言われており、これには様々な説が唱えられています。

筋力発揮は前十字靭帯断裂後の再断裂のリスクなどに関係していることから、筋力を回復させることは大事なことです。

前十字靭帯損傷後は筋力が簡単に戻らない

 

前十字靭帯断裂後の脳からの刺激への反応

前十字靭帯断裂後は脳からの刺激に反応しにくくなることがあるようです。

(Lesley et al 2020より引用)

  • 大腿四頭筋に力を入れている時に脳に刺激を与えることで筋肉に反応が出るのですが、前十字靭帯損傷をしたグループは脳により大きな刺激が必要だったそうです1〜4
  • 興味深いことに、この脳への刺激と筋力に関係性がみられたことが報告されています
  • その一方で前十字靭帯断裂をした脚はむしろ神経の興奮度が高まっていたという研究報告もあるようです

このように前十字靭帯断裂後は脳や神経の影響によって筋肉が反応しにくいのではないか、という説があります。

 

脳神経が小さくなっている?

筋肉が反応にくくなる理由のひとつとして、脳神経の構造的な変化によるものという考え方があります。

(Lepley et al 2020より引用)

  • MRIの計測によると前十字靭帯断裂した側の皮質脊髄路と呼ばれる神経の一部分が小さくなっていたようです
  • 前十字靭帯断裂後は脳の白質に何らかの構造的な変化が生じている可能性があるようです

脳の神経組織が小さくなっていることから、筋肉が反応しにくいのではないか?という説につながるわけです。

まだまだ研究数も少なく強い根拠があるわけではありませんが、興味深い仮説ではあるかと思います。

前十字靭帯損傷におけるバランス感覚の低下について

 

脳神経の機能低下が起こる理由

前十字靭帯損傷後には脳神経の働きが変化することが報告されていますが、これは怪我をした後に発生したものであると考えるのが合理的ではないかと思います。

というのも前十字靭帯断裂をする前から脳神経の機能低下が起きていた、という研究結果はほとんど存在しません。

膝の痛み

前十字靭帯断裂後に脳神経の働きが低下する理由ですが、これは靭帯断裂による痛み、腫れ、拘縮などが脳神経に影響を及ぼしている可能性が考えられます。

前十字靭帯損傷後の筋力低下と痛みと腫れの関係

 

さらには前十字靭帯断裂によってスポーツや運動ができなくなったことも脳神経に影響していることも考えられます。

というのも複雑な動きを伴う運動をやらなくなったこと、身体を動かさなくなること、などによって脳神経への刺激が少なくなるためです。

怪我で身体を動かさないことによる脳神経への影響

 

脳神経の機能を高めていくには?

前十字靭帯断裂後に脳神経の機能を高めていくためには脳神経への特別なアプローチが必要と考えてしまうかもしれませんが、基本的なことも大切であると思います。

というのも脳神経の機能低下につながる可能性があるのは、痛み・腫れ・硬さ・関節の不安定さ・心理的要素・運動量といったものも多く、

これらの要因を消去していくためには、痛みや腫れを減らし、筋力をつけて関節を安定させ、心理的な不安を減らし、日常生活やスポーツに復帰する、

という治療やリハビリなどの基本的なことが大事になってくるかと思います。

前十字靭帯断裂後の筋力回復について

 

とはいえ、それだけでは大腿四頭筋の筋力発揮が簡単に回復しないから困っているという方もいらっしゃると思います。

こういった相談を受けるケースにおいては、痛みや違和感、運動時の恐怖などが残っていて思うようにトレーニングができていないことが多々あります。

まずは安全にトレーニングや運動ができる状態に身体や環境を整え、安心して良いということを脳に学習させることで状態が良くなっていくことが多いと感じています。

前十字靭帯再建後のリハビリがうまくいかない時に見逃されやすいポイント

 

まとめ

前十字靭帯断裂後には筋力発揮が低下することがありますが、その理由のひとつに脳の機能低下が考えられています。

たとえ脳の機能低下が関わっていたとしても、治療やリハビリなどの基本的なことが大切になってきます。

 

<参考文献>

  1. Bodkin SG, Norte GE, Hart JM. Corticospinal excitability can discriminate quadriceps strength indicative of knee function after ACL-reconstruction. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports. 2019;29(5):716-724.
  2. Lepley AS, Grooms DR, Burland JP, Davi SM, Kinsella-Shaw JM, Lepley LK. Quadriceps muscle function following anterior cruciate ligament reconstruction: systemic differences in neural and morphological characteristics. Exp Brain Res. 2019;237(5):1267-1278.
  3. Lepley AS, Ly MT, Grooms DR, Kinsella-Shaw JM, Lepley LK. Corticospinal tract structure and excitability in patients with anterior cruciate ligament reconstruction: A DTI and TMS study. NeuroImage: Clinical. 2020;25:102157.
  4. Ward SH, Pearce A, Bennell KL, Pietrosimone B, Bryant AL. Quadriceps cortical adaptations in individuals with an anterior cruciate ligament injury. Knee. 2016;23(4):582-587.
  5. Héroux ME, Tremblay F. Corticomotor excitability associated with unilateral knee dysfunction secondary to anterior cruciate ligament injury. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2006;14(9):823-833.
  6. Rice DA, McNair PJ, Lewis GN, Dalbeth N. Quadriceps arthrogenic muscle inhibition: the effects of experimental knee joint effusion on motor cortex excitability. Arthritis Res Ther. 2014;16(6).

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