テニス選手の膝の痛みの原因
柔軟性
テニスの膝痛を防ぐために膝周りの柔軟性を高めることは大切ですが、膝周りの柔軟性ばかりが注目され、他の部分が疎かになってしまうことがあります。
例えば股関節の内外旋の可動域も重要な要素であり、股関節が硬いとショットを打つときに股関節に力を分散することが難しくなり、膝に負担がかかりやすくなる可能性があります。
他にもふくらはぎの柔軟性も大切であり、ふくらはぎや足首が硬いとスムーズな回旋動作が難しくなり、膝周りの筋肉に頼ったスイングになりがちです。
ステップワーク
テニスの練習や試合におけるステップワークのクセも膝の痛みに関わってくることがあります。
例えば膝が内側に入ってしまうような、ニーインの動きは膝の負担が大きくなりやすいと言われていますし、膝のポジションが悪いとショットの威力が落ちてしまうこともあります1。
試合展開やプレースタイルなどによって膝の負担が違ってくることがあり、例えばディフェンス局面でのショットは膝の負担が大きくなりやすいことが報告されています2。
そして、長時間のプレーで疲労が出てくるとステップワークが乱れやすくなり、膝の負担が大きくなってしまうことも珍しくありません3。
このため長時間の練習や試合をこなせるような持久力も大事なポイントになってきます。
サーブのフォーム
サーブを打つ時の膝の動き次第では膝の負担が大きくなってしまう可能性があります。
例えば膝を深く曲げるとサーブのスピードが上がりやすくなりますが4、これは膝に大きな負担がかかってしまう可能性があります。
また、サーブを打つときに膝が内側に入ってしまうような、ニーインのクセがある場合などにも膝に負担がかかりやすくなってしまいます。
さらには、3時間を超えるような試合ではサーブを打つ時の下半身の動きが乱れやすいことが報告されています5。
筋力不足
膝周りの筋力不足もテニスにおける膝痛の原因になり、大腿四頭筋やハムストリングスなどが十分に鍛えられていないと膝を痛めるリスクが高まります。
膝の筋肉だけでなく、股関節や体幹の筋肉もテニスのステップワークに関わってくるため、これらの筋力が弱いと膝の負担が大きくなってしまいます。
過剰な運動量
テニスでは長時間のプレーが多くなりやすく、試合などが続くと知らず知らずのうちに膝にダメージが蓄積されていきます。
普段と比べて急激に運動量が増えている時がリスクが高く、オフシーズンなどのまとまった休養を取れていない期間が続くと膝を痛めるリスクが高まります。
テニス選手の膝の痛みの改善方法
ストレッチ
股関節周りのストレッチを行うことでストロークを打つ時の股関節の動きがよくなり、膝の負担を減らすことができます。
開脚のストレッチだけでなく、お尻部分のストレッチや股関節の前部分のストレッチなどバランスよく取り組むことが大切です。
ふくらはぎをストレッチで伸ばすことも膝の負担を減らすのに役立ちます。
マッサージ
ストレッチだけでは伸ばすことが難しい筋肉があるため、マッサージやフォームローラーなどを組み合わせて筋肉をほぐすことで柔軟性が高まりやすくなります。
股関節周りをほぐすことに加えて、下腿や足首周りまでほぐすことができるといいでしょう。
ニーインの改善
ステップワークやサーブの時のニーインは膝の負担が大きくなりやすいため、しっかりと解消しておくことが大切です。
膝が内側に入ってしまうのには様々な原因が考えられ、身体のバランスをうまく整えることが必要になってきます。
原因を的確に見極められないと思うようにニーインが改善しないことも珍しくなく、ニーインがなかなか解消しないことも多々あります。
ランニング時のニーインの原因と改善方法について
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トレーニング
テニスにおける膝の痛みを改善するためにはトレーニングで筋力を強化することが役立ちます。
痛みを抱えているときに大きな筋肉を鍛えるようなトレーニングをすると膝の痛みを悪化させてしまう可能性が高いので、まずはインナーマッスルなどの細かい筋肉から鍛えていくことがポイントです。
痛みが良くなっていくにつれて、少しずつ負荷をかけるようなトレーニングなども取り入れていき、大腿四頭筋やハムストリングスなどの大きな筋肉も鍛えておくことが大切です。
まとめ
テニス選手の膝の痛みは柔軟性の低下や筋力不足、ステップワークの乱れやサーブを打つ時の膝の位置などが原因になります。
ストレッチなどで柔軟性を高め、トレーニングで弱い筋肉を鍛えて身体のバランスを整えることが膝の痛みの改善に役立ちます。
<参考文献>
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